寒食節
March 31, Monday
起源と歴史
寒食節の起源は中国の春秋時代にさかのぼります。晋の文公(重耳)とその忠臣・介之推(かいしすい)にまつわる伝説が有名です。重耳が亡命中に介之推が自らの太ももの肉を切って煮て差し出したという逸話があり、後に文公が即位した際に彼を探し出そうとしましたが、介之推は名誉を求めず山に隠れました。文公は彼を見つけ出すために山に火を放ちましたが、介之推は焼死してしまいました。この悲劇を悼み、文公は彼の命日に火を使わず冷たい食事をとるよう命じたことが、寒食節の始まりとされています。
風習と習慣
寒食節では、火を使わずに調理された食べ物を食べることが伝統とされています。具体的には、前日に調理した料理や保存食、冷たい餅や果物などが食卓に並びます。また、墓参りや祖先を偲ぶ行事も行われ、清明節と密接に関連しています。
一部の地域では、寒食節に凧揚げや踏青(春の野山を歩く)といった春の訪れを祝う行事も行われます。これらは清明節と重なることが多く、寒食節が次第に清明節に吸収されていった背景もあります。
ベトナムにおける寒食節
ベトナムでは寒食節は「Tết Hàn Thực(テット・ハン・トゥック)」と呼ばれ、旧暦の3月3日に祝われます。この日は特に北部ベトナムで重視され、家族が集まり、祖先に供えるために「バインチョイ(Bánh trôi)」や「バインチャイ(Bánh chay)」という伝統的な餅菓子を作ります。これらはもち米粉で作られた団子で、冷たいまま食べるのが特徴です。
ベトナムでは寒食節は宗教的というよりも文化的な意味合いが強く、家族の絆や祖先への敬意を表す日として親しまれています。
現代における寒食節
現代では寒食節の風習は地域によって異なり、特に都市部では簡略化される傾向があります。しかし、伝統を重んじる家庭や地域では今もなお、火を使わずに食事をとる習慣や、祖先を偲ぶ儀式が行われています。また、寒食節は春の訪れを感じる節目として、自然とのつながりを再確認する機会にもなっています。